桜の下の約束
高校最後の春、桜の花びらが舞う中、麻衣はいつもと変わらない日常に少しだけ違和感を感じていた。クラスメートたちが大学進学を決めている中で、彼女は自分の進路に対する明確なビジョンが持てずにいたからだ。そんな彼女の心の拠り所は、幼馴染の誠だった。誠はサッカー部に所属し、明るくて優しい性格で、周囲からも人気があった。麻衣は、そんな彼を何よりも大切に思っていたが、彼女の気持ちに気づいているとは思えなかった。
ある日、麻衣は放課後の教室に残り、自分の進路について悩んでいた。窓の外からは、サッカー部の歓声が聞こえてくる。麻衣は思わずその声に耳を傾けた。その時、誠が教室に入ってきた。「何してるの?」と声をかける彼を見上げ、麻衣は少し驚いた。「うーん、進路のことで悩んでるんだ」と答えた。
誠は少し考え込むように眉をひそめ、「一緒に考えてあげるよ」と言った。彼はいつも優しく、麻衣の気持ちを理解してくれる。それが嬉しかったが、同時に彼を友達以上に思う気持ちがどんどん大きくなっていることに気づいていた。
その日の放課後、麻衣と誠は近くの公園に行った。桜の木の下に座り、彼女は一緒にいた時の自分の気持ちを伝えようかどうか迷った。すると、誠がふとあたりを見回し、「麻衣、桜がきれいだね。新しいスタートにぴったりの景色だ」と言った。その言葉に麻衣の心は躍った。ああ、今がそのタイミングなんだと。
「誠、私、ずっと誠のことが…」言いかけた瞬間、麻衣は言葉を飲み込んだ。彼の目が驚きに満ちたからだ。麻衣は急に怖くなり、「なんでもない、なんでもないよ」と目を逸らした。
その夜、麻衣は誠のことばかり考えていた。どうしても彼に自分の気持ちを伝えたい。だけど、いつもはポジティブな彼に、自分の思いが負担になったらどうしよう。そんなことが頭をぐるぐる巡っていた。
翌日の昼休み、麻衣は意を決して誠を呼び出した。「少し話があるんだけど…」と彼を公園に誘った。やはり桜が満開で、風に舞う花びらが二人を包み込んでいた。麻衣は心の中で言葉を整理しながら、「今、私たちの未来が見えないけれど、誠と一緒にいたいと思ってる」と言った。
誠は一瞬驚いた表情を見せた後、優しく微笑んだ。「俺も、麻衣と一緒にいる時間が好きだよ。でも、進路のことはどうするの?」彼が答えた言葉は、麻衣の気持ちを温かく包み込むものであった。しかし、そこでしっかりした答えが出せなかった。
「私も、進路のことは考えなきゃいけない。でも、今の気持ちを無視したくない」と麻衣は続けた。誠は少し考え込み、彼女の目を見つめ返した。その瞬間、麻衣の心がドキリとした。彼は何かを言おうとしているように見えた。
「じゃあ、これから一緒に悩もう、進路のことも、俺たちのことも。」そう言った誠の笑顔は、麻衣にとって大きな安心感をもたらした。彼の横で一緒に未来を考えることで、少しずつ自分の道も見えてくるかもしれないと思えた。
その後、麻衣と誠はそれぞれの夢を追っていく中でも、互いに支え合う関係を築いていった。進路選択や将来への不安、期待を共有することで、二人の絆は一層深まっていった。そして、桜の季節から少しずつ夏に向かう中で、彼女の心には確かな自信が芽生えていた。
高校生活が終わるころ、麻衣は少しずつ自分の進む道を見つけることができた。誠との関係も、友達から一歩進んで互いに大切な存在となっていた。そして、迎えた卒業式の日。彼女の心の中には誠との新たなスタートに対する期待と恐れがあったが、それ以上に彼と共に歩む未来へ向けた希望が満ちていた。
それぞれの夢や目標を持ちながらも、麻衣は誠との愛を大切にし、彼の存在を心の支えに新しい世界に踏み出していくのだった。青春の輝きは、いつまでも続くことを願って。