星空の告白
高校最後の夏休み、青空が広がる中、わたし――花村香織は、校庭のベンチに座って友人たちと談笑していた。蝉の声が響く中で、微かな風が私たちの髪を優しく揺らす。この瞬間が、永遠に続けばいいのにとそう思う。
「なぁ、文化祭の準備、どうする?」一番元気な友人、山田圭一が茶髪をかき上げながら言った。
「そうだね。今年は最後の文化祭だし、思い出に残るようにしたいよね」桜井舞が笑顔で答えた。その笑顔はどんなに見ても飽きることはない。
「男子の方はアイスクリーム屋台、女子はお化け屋敷だったよね?」私は確認するように尋ねた。
「うん、そうだよ。今年はみんなで考えて決めたからね」圭一がニヤリと笑った。
私たち4人は、クラスの人気者だった。勝手に自分たちで言うのも何だけど、本当にそうだ。圭一はクラスのムードメーカーで、舞は誰からも愛される存在。そして、リーダーシップや豊富な知識で文武両道の佐藤勝也。私はどちらかというと、目立たないけど、みんなを支えるバックアップ役だった。
その夜、文化祭の計画を立てるために再び集まった。教室の窓から、夕日が柔らかく差し込み、各々の顔をオレンジ色に染めた。
「お化け屋敷の中での仕掛けとか、どうする?」舞がノートを開いて意見を募ると、勝也がパソコンを叩きながら言った。
「具体的なアイディアはすでに何個かあるよ。でも、今回はもっとインタラクティブにしようと思ってさ」
「へぇ、具体的には?」圭一が目を輝かせた。
「例えば、来場者の反応に応じてリアルタイムで変化する仕掛けをいくつか用意する感じ。声とか動きに反応するセンサーを使って、もっとリアルに感じさせたい」
「それ、すごいじゃん!圭一、ガチで怖がりそうだな」私は茶目っ気たっぷりに言った。
次の朝から、本格的な準備が始まった。校内は忙しく、どのクラスも一つの目標に向かって一心に頑張っていた。私たちもその波に乗りながら、少しずつ完成形が見えてくると、その達成感が高まり心が躍るようだった。
ある日、夕方まで準備が続き、みんな疲れ果てていた。私は圭一と帰り道を歩きながら、ふと青春という言葉が頭をよぎった。
「青春ってこういう感じなんだろうね、圭一」
「ん?まぁ、たぶんそうだろうな。普段は意識しないけど、こうして振り返ってみるとさ」圭一は肩をすくめた。
そして、文化祭当日がやってきた。校庭は歓声と笑い声で溢れ、みんながそれぞれの役目を果たしていた。私たちのクラスのブースも大盛況で、お化け屋敷は特に反響を呼んでいた。
夜になり、文化祭のフィナーレ。体育館で行われるライブパフォーマンスを観るためにみんなが集まり、真っ暗な中で光り輝くライトが映し出す景色は、忘れられない瞬間だった。
その瞬間、ふと勝也が私に話しかけてきた。「香織、ちょっと外に出ようか」
「え?どうしたの?」私は突然の誘いに戸惑ったが、勝也の真剣な表情に促され体育館を出る。
外に出ると、夜空に輝く星々が美しかった。勝也は沈黙を破るように口を開いた。「香織、ずっと好きだったんだ」
その言葉に、私は驚き、胸が熱くなった。こんなに近くにいたのに、そんな風に感じてくれていたんだ。勝也の瞳は真摯で、偽ることのない感情がそこにあった。
「勝也、私も…ずっと、あなたのことが好きだった」
勝也の顔がぱっと明るくなる。彼の手が私の手を握り、私たちは星空の下でその瞬間を共有した。
日はすぎ、それぞれの道を歩み始める日がやってきた。笑い、涙、喜び、悲しみ、その全てが詰まった「最後の夏休み」の思い出は、私たちにとって一生消える事のない宝物だった。青春のきらめきは、心の奥深くで永遠に輝き続ける。