アシュフォードIIIの謎
冷たい宇宙の闇の中、宇宙船「アルゴノート」は孤独な航行を続けていた。この船の乗組員、若きエクソプラネット探査官リア・アシュフォードは、一見人なつっこく、好奇心旺盛な科学者だが、その背後には壮大な目標が隠されていた。彼女は自らの姓を冠した新しい世界、アシュフォードIIIを発見する夢を抱いている。
ある日、アルゴノートのセンサーが未知の惑星をキャッチした。惑星の形状や温度、地表の特徴から、隊内で「ガンマエ」と呼ばれたこの星は、生命が存在する可能性が極めて高いとされた。リアは興奮し機長のジョン・ヘイスティングスに向き直った。「ジョン、これだわ!さっそく調査を開始しましょう!」
宇宙船は慎重にガンマエの軌道に向かって進み、リアとジョン、さらに技術者イーサンが惑星表面に降り立った。ガンマエのウェルカムは想像以上に険しく、強烈な重力と,猛威を振るう嵐が彼らを迎えた。しかし、リアの熱意は変わることがなかった。
調査が進む中、彼らは驚くべき発見を次々と重ねていった。未知の植物や鉱物、いたるところに散らばる古代の構造物。とりわけ重要だったのは、完全に保存された状態の遺物だった。それは古代文明の印鑑のような文字が刻まれた石碑だった。
「これは・・・?」石碑を調べるリアの口から自然と出た言葉。
「リア、これは異星人の文明の証かもしれない。信じられるか?」ジョンの声が興奮に震えている。リアは彼の言葉に頷いた。「ええ、これが証拠よ。この星にはかつて知的生命体が存在したに違いない。」
しかし、彼らの興奮は持続しなかった。調査期間が限定されているという現実が立ちはだかった。安全を保つため、船に戻る時間が迫っていた。リアはかつてない決断をする。「帰還する前に、もう一度だけ探索を続けましょう。答えはここにあるはずです。」
その言葉に異論はなかった。続く探索の中で、ついに彼らは巨大な地下施設への入口を発見した。リアの心は高鳴った。灯りを灯し、洞窟のような構造物の中を進む。驚くべきことに、その奥には完全な状態で保存された、高度な技術を誇る異星の研究施設が広がっていた。
「これは何かの実験室...でも、誰がこんな場所を作ったんだ?」イーサンが考えを巡らせる。
リアは施設の中心に置かれた透明なカプセルに近づいた。その中には、休眠状態の異星人が横たわっていた。まるで時間が止まったかのように、その姿は現代とともにないほど古めかしかった。「私たちはとてつもない発見をしたわ。これがアシュフォードIIIになるのよ。」
しかし、安堵する間もなく悲劇が訪れる。施設が隠していた防御システムが作動し、全方向から鋭いレーザーが彼らを狙った。「ジョン、急いで脱出だ!」リア叫びながら、全力で施設の出口に向かう。もはや一刻の猶予も許されない状況だった。
嵐の中で見失いかけた出口を辛うじて見つけたころ、施設が崩壊を始めた。イーサンが巨大な岩に捕らえられ、ジョンが必死に引き上げようとする。リアも協力し、なんとか彼を救出したが、命の危険はすぐそこに迫っていた。
「全員無事か?!」ジョンが叫ぶ。
「ええ、全員無事よ!」リアは確認するが、時間はない。彼らは全力で宇宙船へと戻り、緊急離水を実行した。ガンマエは背後で崩壊していく。
アルゴノートの船内、三人は無言のまま船窓越しにガンマエの姿を見つめた。リアは目に涙を浮かべてつぶやいた。「私たちは新しい世界を見つけたわけじゃない。しかし、その過程で信じられないものを発見した。」
ジョンは彼女の肩に手を置いた。「そうさ、そしてそれは冒険の終わりじゃない。新たな始まりなんだ。」
彼らの冒険は終わりを告げたが、宇宙にはまだ無数の未知が広がっている。リアは未来に向かう勇気と、次なる探索への決意を胸に、宇宙の闇を見つめた。アルゴノートは新しいフロンティアに向けて、再び冷たい宇宙の海を進み始めた。