友情の輝き
星月(せいげつ)高校の中庭には大きな銀杏の木があり、秋になると黄色い葉が美しいカーペットのように地面を覆う。この銀杏の木は、新入生から上級生まで、誰もが親しんだ学校のシンボルだ。
今日もまた、星月高校の中庭には生徒たちの賑やかな声が響いていた。三年生の美咲(みさき)と友梨(ゆり)もその中にいた。二人は入学以来の大親友だ。普段は互いに補い合い、支え合っているが、今日は少し違っていた。
友梨は美咲に向かって俯いたまま話しかけた。「美咲、ごめんね。私、もう部活に出られないの。」
美咲は一瞬混乱した。「え、どうして?何かあったの?」
友梨は涙目で笑おうとしたが、声が震えてしまった。「家庭の事情で、バイトを増やさないといけなくなったんだ。それで、部活との両立が難しくなっちゃって…」
美咲は手を握り返して、友梨の目を見つめた。「大丈夫、友梨。無理しないで。私たち、どんなことがあってもずっと友達だから。」
友梨は泣き笑いしながら、美咲の手を握り返した。「ありがとう、ありがとう、美咲。でも、ごめんね。本当にごめん。」
その後、部活顧問の先生にも事情を話し、友梨は一時的に活動を休むことになった。彼女の欠席は部員たちにとってもショックだったが、友人たちの支援で乗り切ろうと決意した。
美咲は友梨のために何かできることがないかと考え始めた。次の日、授業後に図書室でノートパソコンを開き、美咲は真剣な表情で画面を見つめていた。その時、クラス委員の大輔(だいすけ)がおずおずと近づいてきた。
「美咲、何かあったのか?」
美咲は彼を見上げてため息をついた。「友梨が大変で、何か助けになれないか考えているんだけど…」
大輔は椅子を引いて隣に座り、美咲に向かって真剣な目で言った。「俺たちの友情、信じられるだろ?友梨だけの問題じゃない、みんなで何かできることがあるはずだ。」
その言葉に美咲は勇気をもらい、彼と一緒に計画を立て始めた。友梨の支援のために募金活動を行うことを決めたのだ。まずは部員たちに話し、次に他のクラスにも協力を呼びかけた。結果、学校全体での大きなイベントに成長していった。
募金活動が始まり、中庭の銀杏の木の下に特設ステージが設けられた。文化祭とは違う特別な雰囲気が漂い、たくさんの生徒と先生たちが集まった。ステージでは、美咲が中心となってプログラムが進行していった。
ピアノの音色が響く中、美咲は友梨の好きな曲を演奏した。その音色は心に染み渡り、中庭の雰囲気が温かく感じられた。その後、大輔が募金活動の目的を説明し、皆の協力を呼びかけた。
この募金活動のおかげで、友梨の家庭は一時的な金銭的援助を受けることができ、彼女は再び部活に戻ることができた。それだけでなく、今回の一件で友達や先生たちの絆がより強くなった。
冬が訪れると、中庭の銀杏の葉はすっかり落ち、寒風が吹き抜けた。でも、そんな寒さの中にも温かな絆があった。放課後、美咲と友梨は再び銀杏の木の下で互いに笑い合っていた。
「全然知らなかったよ、こんなにたくさんの人が私のために動いてくれるなんて。」友梨は感激した表情で言った。
美咲は肩をすくめて微笑んだ。「だってさ、友達だもの。そのためにみんながいるんだよ。」
その時、美咲の横を通り過ぎた大輔が声をかけた。「友情ってのは、こうやって形になるもんなんだよ。俺たち、いつだって力を合わせていけるさ。」
友梨はその言葉を聞いて、心から笑った。「そうだね、本当にありがとう。これからはもっとみんなで頑張ろう!」
そして美咲も、大輔も、友梨も、その場にいたすべての生徒たちも、強い絆で結ばれ、これからの未来に向けて新たな一歩を踏み出していった。
星月高校の銀杏の木は、そのまた新しい葉が芽吹く春を待ちわびながら、今日も変わらぬ青空の下でみんなを見守っていた。