エルドリスの歌
昔々、緑豊かな島「エルドリス」が存在した。この島は魔法の力を持つ生き物たちが共存する場所で、空には虹色の鳥が舞い、海には光る魚が泳いでいた。しかし、最近、島の自然は次第に狂い始め、人々はその理由を探っていた。
この島に住む少女リナは、特に自然との繋がりが深い子だった。彼女は夕暮れ時、一人で森に入り、木々や小川の声を聞いて心を癒していた。しかし、最近はその森の声がいつもとは違うことに気がついていた。木々はしおれ、川はごうごうと不安定に流れ、動物たちも姿を消していた。リナは心を痛めながら、何か手を打たなければならないと考えた。
ある晩、リナは夢の中で目を覚まし、うっすらと光る道が森へと続いているのを見つけた。好奇心に駆られたリナは、その道を進んでみることにした。道の先には、輝く泉があり、その周りには美しく装飾された石像が立っていた。泉の水は不思議な色をしており、リナはその美しさに目を奪われた。
突然、泉から声が聞こえた。「私の名前はエルナ。長い間、この島を守ってきた精霊だ。しかし、今、島の運命が危機に瀕している。人々の心が自然を忘れ、欲望に満ちた生き方を選んだからだ。」
リナは驚きながらも思いを巡らせた。「私たちはどうすればいいの?どうしてそんなことになってしまったの?」
エルナは悲しそうに答えた。「人々は自らの欲望を優先し、自然への感謝を忘れてしまった。私の力も枯れ果て、島は今や破滅の一歩手前だ。しかし、あなたにはその力を再生させる力があるかもしれない。」
リナは自分にそのような力が本当にあるのか疑問に思ったが、エルナの言葉に心を打たれた。この島を救うために、何かしなければならないと決意した。それからリナは、島の人々に自然の大切さを伝える歌を作り始めた。
翌朝、リナは村の広場で歌を歌い始めた。彼女の透き通った声は、遠くまで響き渡った。「私たちの手のひらに、自然の恵みがある。心を込めて、大地を守ろう。」
村人たちは最初、リナの歌を冷ややかに見ていた。しかし、その声の中に込められた感情に共鳴し、少しずつ心を動かされていった。彼らはリナの歌に合わせて手を叩き、次第に集まる人が増えていった。
村が一つになって歌い始めた頃、エルナの泉が光り輝き、島全体に温かい風が吹き渡った。その風は、枯れかけた木々を揺らし、小川に再次流れをもたらした。村人たちはその光景に驚き、自然の回復を実感した。
日が過ぎ、リナの歌は島中に広まり、人々は自然を大切にすることの重要性を再認識した。彼らは海を清掃し、樹木を植え、動物たちと共に生きることを誓った。エルナの力によって、島は徐々に元の美しい姿を取り戻した。
月日が経ち、リナは成人し、村の女長になった。彼女の心には、初めてエルナと出会ったときの決意が息づいていた。彼女は毎年、村人たちと共にお祭りを開き、自然への感謝の歌を奏で続けた。その歌は、リナを超えて、未来へと受け継がれることになった。
エルドリスは今も美しい島であり続けている。自然との調和を大切にする人々が住んでいて、彼らはいつまでもその恵みに感謝し、守っていくことを誓った。リナの歌は今でも、緑の風に乗って、島のどこかで響いている。