青い炎の愛
深い森の奥に、青い炎を灯す湖があった。その湖の畔には、精霊たちが集う村があり、そこで一人の少女、リリスが暮らしていた。リリスは、湖の神秘的な力を信じ、日々さまざまな花の香りで作った香水を調合するのが好きだった。彼女の香水は、村の人々の心を和ませ、彼女自身もその香りに癒されていた。
ある日、村の外れでリリスは見慣れない姿をした男に出会った。彼の名はアレン。彼は地上の人間ではなく、何世代も続く龍の末裔だった。彼は人間の姿で湖の水を求めて、この地にやってきたのだった。しかし、湖は彼の真の姿を奪う力を持っており、アレンは再び龍の姿に戻れなくなってしまった。
リリスはアレンの存在に強い引かれるものを感じた。彼の青い目、少し傷ついた顔、優しい声。二人は湖の畔で何度も会い、次第に心を通わせるようになる。リリスはアレンに自分の作った香水を振りかけ、彼はその香りに包まれた瞬間、少しだけ記憶が呼び起こされた。
「これは…誰かの香りだ。」アレンは思わずそう呟いた。
「私が作った香水よ。あなたにも、何か意味があるのかもしれない。」リリスは、アレンの真実を知りたいと思った。
ある晩、湖の青い炎が神秘的に輝く中、二人は初めてのキスを交わした。リリスはアレンから伝わる温もりを感じ、アレンはリリスの清らかな心に触れた。彼の心の中で、再び龍の力が目覚めようとしていた。しかし、その力は彼女の香りが引き起こすもので、同時に彼の運命をも変えてしまうことを知り、アレンは悩んだ。
「君を愛している。だが、私が龍の姿に戻った時、君を離さなければならないかもしれない。」アレンは言った。
「それでも、あなたのことを知りたい。あなたがどんな存在であれ、私の心は変わらない。」リリスは真剣に彼の目を見つめた。
二人は夜ごとに会い続けた。リリスはアレンのために香水を調合し、アレンはその香りに包まれながら、深い愛に満ちた心の絆を育んでいった。しかし、彼の中で龍の力が強まるにつれ、リリスとの関係が崩れる恐れも増していく。
ある日、湖の水面に異変が現れた。青い炎が激しさを増し、周囲の森もその影響を受け始めた。アレンは自分の体の中で力が暴れ始めているのを感じ、リリスに告げた。
「今夜、湖の色が変わった。私がもし戻ったら、君を傷つけるかもしれない。だから…」
だがリリスは彼を止めた。「私はあなたを信じている。どんな結果になっても、あなたの側にいたい。」
二人は決意を新たにし、湖の畔で最後の夜を過ごした。青い炎が彼らの運命を見守る中、アレンはリリスの手を握り、彼女の香水の香りを感じていた。
やがて、夜空に満月が昇り、湖の水面が輝いた。アレンの体が光に包まれ、龍の姿に戻ろうとする。リリスの心が痛んだが、同時に彼の真実を受け入れようと決意した。
「愛してる、アレン!」リリスは叫んだ。
その瞬間、アレンの体は青い光となり、湖に消えた。リリスは涙を流しながらも、彼との思い出を胸に刻んだ。
数日後、リリスはその香水を村に広め、アレンとの愛を引き継ぐべく、龍の伝説を語った。彼女の香りは村を包み、皆の心に彼女の物語を刻むこととなった。アレンはイメージの中で彼女を思い描きながら、青い湖の精霊として永遠に彼女を見守ることになった。
リリスは決してアレンを忘れず、彼との愛が時を超える力を持っていることを信じて生きていく。それは、青い炎の湖に宿る愛の物語であった。