桜舞う恋の行方
春の訪れとともに、桜の花が校庭を染める季節がやってきた。高校三年生の美咲は、友達と一緒に笑い合いながら、毎日のように放課後に校庭で桜の木の下に集まっていた。彼女は明るくおしゃれで、誰からも好かれる性格だったが、心の中ではひとつの秘密を抱えていた。
その秘密の相手は、同じクラスの圭介だった。彼は無口で冷静、一見すると無関心そうに見えるが、時折見せる優しさに、美咲は何度も心を射抜かれた。圭介の隣にいても自身の感情を伝えることができず、いつも友達との会話に輪を戻すのが精いっぱいだった。
美咲は、圭介が夢中になっているバスケットボールの練習をよく見に行った。彼がコートの真ん中でボールを扱う姿は、まるで主人公のようで、彼女は思わず息を呑んだ。そんなある日、彼女は自分の気持ちを整理するために友達の沙織に相談した。
「沙織、私、圭介のことが好きなんだ。でも、どう伝えたらいいかわからなくて…」
沙織は驚いた様子だったが、すぐに明るい声で応えた。「じゃあ、放課後の練習を観に行くときに直接話してみれば？一緒にいる時は意外と緊張しないかもしれないし！」
美咲は自分の胸が高鳴るのを感じた。次の日、彼女は果敢にも圭介に声をかける決心をした。バスケ部が練習している時、彼女は静かにコートの横に立ち、圭介がシュートを決める姿を見守った。緊張している自分に笑いがこぼれた。
練習が終わる頃、圭介が近づいてきて言った。「見てた？苦戦してたけど…」と少し照れくさそうな顔をした。美咲はその瞬間、心臓が跳ねて、言葉が出てこなくなった。
「頑張ってたね。カッコよかったよ」と言えるのが精いっぱいだった。その返事が意外にも圭介の顔を明るくさせた。「ありがとう、美咲。君が見に来てくれると思うと、自分も頑張れる気がする。」
その言葉に、彼女の心はさらに弾んだ。次第に日に日に圭介との距離は縮まり、学校の食堂で一緒にランチを取ることも増えた。そして、美咲は少しずつ自分の気持ちを伝えたいと思うようになった。
卒業式が近づく頃、桜は満開を迎えた。美咲は、一緒に桜並木を歩いてくれるように圭介を誘った。「今日は桜がきれいだね」と、美咲が言うと、圭介は「そうだね。ほんと、きれいだ。」と微笑んだ。
その瞬間、美咲はこれが最後のチャンスだと感じた。彼女は息を整え、言葉を紡いだ。「実はね、圭介、私、ずっとあなたのことが好きだったの。」
圭介は一瞬驚いた様子だったが、すぐに笑みを浮かべた。「美咲、僕も…君のことが気になってた。この前の試合でも、君が見てくれてたとわかった時、緊張がすごかった。」
その言葉に美咲は嬉しさと安堵で涙が出そうになった。「本当に？じゃあ、一緒に遊びに行ったり、もっとお互いのことを知りたいな。」
彼は頷き、二人は笑い合いながら桜の下に座り込んだ。桜の花びらが風に舞う中、彼女は未来への期待に満ちていた。半年後、彼らは進学のためにそれぞれの道を歩むが、出会った奇跡の瞬間を大切に育んでいくことを誓った。青春の甘酸っぱい思い出を胸に、二人は新しい旅立ちに向かって歩いていった。
