冷たい微笑みの下で
彼女は静かな街の一角にある小さな一軒家に住んでいた。外観は古びていて、近所の人々はあまり近づこうとしなかった。しかし、彼女の名前はアヤといい、無邪気な微笑と同時に、不気味な雰囲気を漂わせていた。アヤは毎日のように近所の公園に現れ、花を摘んだり、子どもたちと遊んだりしていたが、彼女の振る舞いにはどこか異常なものを感じる人もいた。
数週間後、近所で一件の失踪事件が報じられた。失踪したのは、ひとりっ子の少年、ダイゴだった。彼は元気に遊ぶ子どもだったが、公園での最後の姿を目撃された後、どこにも姿を現さなかった。母親は悲嘆に暮れ、近所の住人たちはその消息を気にかけていた。しかし、アヤはいつも通りの生活を送っていた。
ある日、アヤは家の裏庭を手入れしていると、隣の家に住む主婦、サチコが不安そうな顔で声をかけてきた。「あなた、ダイゴのこと知ってる?」彼女の目には恐れが浮かんでいた。アヤは微笑んで答えた。「いいえ、特には。でも、どうしてそんなに心配しているの?」
「彼、もう一週間も帰ってこないのよ。私たち、みんな心配してるの。」サチコは声を震わせた。アヤはにこりと笑い、サチコの不安を楽しむように感じられた。心の奥底で、彼女の中にひそむ冷淡な感情が満ちているのを感じながら。
数日後、警察が近所を訪問し、アヤにも話を聞きに来た。彼女は心配そうな演技をしながら、ダイゴのことを尋ねられた。「最後に見たのが公園だそうですね。そこで何か見ましたか?」アヤはあたかも何も知らないかのように答えた。「私はただ、花を摘んでいただけですよ。かわいそうな子、無事でいてくれるといいですね。」
警察は明確な手がかりを見つけられず、街の雰囲気は次第に重苦しくなっていった。人々は互いに疑心暗鬼になり、アヤもその一員として疑われることはなかった。しかし、彼女の心の中では、何かが進行していた。
数週間後、物語は意外な方向に動き出す。ダイゴの失踪から一ヶ月が経ち、ついに彼の遺体が近くの森で見つかったとの報道がなされた。悲しみに明け暮れる街の人々。しかし、アヤはそのニュースを聞いて、心の中で小さな喜びを感じていた。彼女が心から待ち望んでいた瞬間が訪れたのだ。
この街の人々は、彼女の冷たい何かに気づかず、永遠に彼女の笑顔しか見えていなかった。アヤは喜びに満ちた顔を隠すこともなく、ダイゴの母親が泣いている横を通り過ぎ、静かに帰宅した。
その夜、アヤは自宅の地下室にこもり、長い間しまい込んでいた箱を引っ張り出した。それは趣味のコレクションではなく、彼女の「作品」が入っている箱だった。ゾッとするような美しい標本が整然と並べられていた。それはダイゴのものではなく、彼女が何人もの人々から集めたもので、彼女の冷淡な心の象徴だった。
彼女は一つ一つの標本に触れながら、その瞬間に至るまでの出来事を思い返していた。彼女には寒々しい興奮が宿っていた。彼女の心の中に秘められたサイコパス性はついに姿を現し、それを楽しむことができる状況に至ったのだった。
翌朝、アヤはまるで何事もなかったかのように、いつも通りに街を歩いた。彼女はダイゴの母親が悲しみにくれる姿を見ながら、その背後に微かに笑みを浮かべていた。この街にはあなただけの笑顔が浮かび、他の誰もそれに気づくことはなかった。
その日、彼女の夢は再び叶った。新たな標本が彼女のコレクションに加わる日が、じわじわと迫っていることを、彼女は内心で感じていた。アヤの心に棲む冷酷さが、次第に彼女の真の姿を浮かび上がらせていた。彼女は真実への道を歩む一方で、他者の心を遊び道具のように扱っていたのだ。