エリカの選択
彼女の名はエリカ。確固たる信念を持った若き魔法使いであり、魔法の力を持つ者たちが禁じられた暗い森「ミストウッド」にあえて足を運ぶことは、誰もが避ける禁忌であった。しかし、エリカはその森の奥に埋もれた「星の石」を求め、旅を始めた。星の石は、時空を操る力を秘めており、過去の過ちを正す可能性を秘めていたのだ。
エリカは、小さな村で愛されて育った。彼女の両親は、穏やかな農夫と薬草師だったが、彼女が10歳の時、急逝してしまった。村人たちは彼女に同情し、育てることを手伝ってくれたが、彼女の心はいつも孤独で満たされていた。エリカは、自分の両親を失った原因が、ある古い伝説に関わっていることを知っていた。村の長老は語っていた、それは「ミストウッド」に住む魔女の仕業だと。
エリカはその魔女と対峙することで、真実を知り、心の傷を癒したかった。彼女は、周囲の警告を無視し、暗い森への道を進んだ。薄暗い木々の間から漏れる光は、まるで彼女の心情を映すように、不思議な美しさをもっていた。森の中では、霧が漂い、時折、かすかな囁き声が耳を刺す。恐怖が彼女の中に芽生えたが、エリカは決して後退しなかった。
数時間歩いた後、彼女は突然、目の前に現れた岩の壁に突き当たった。その岩には、美しい文様が彫られており、まるで生きているかのようにうねっている。ここにこそ、星の石が隠されているのかもしれない。エリカは、手をかざして壁を触れた。そこに流れるエネルギーが彼女の指先を包み、心の奥底から声が湧き上がる。「選択せよ。欲望か、知識か。」
エリカは瞬時に自らの欲望を認識した。両親と再会したいという願望。だが、その瞬間、彼女は気づく。何度も同じ過ちを繰り返すことは、誰にも幸せをもたらさないことを。彼女の目には、両親の笑顔が浮かんでいたが、それは過去の出来事であり、現実ではない。その思い出を大切にすることこそが、彼女の歩むべき道なのだ。
「知識を選びます。」彼女は静かに言った。すると、岩の壁がゆっくりと動き始め、隙間から眩い光が漏れ出した。エリカはその光に導かれ、心の奥に眠る知恵を呼び起こした。彼女の中で、失ったものに対する悲しみが消え、新たな希望が芽生える。
森の奥深く、エリカは伝説の魔女と出会うことになった。彼女は美しい姿をしていたが、その目は冷たく、長い髪は無限の闇を抱えているようだった。「来たか、若き者よ。私のもとへ何の用だ?」
エリカはその魔女に向かい、心の底から声を発した。「私は私の過去を知り、未来を変えたいのです。人々が抱える恐れや悲しみをなくしたい。」
魔女は一瞬、彼女の目を凝視し、微笑みを浮かべた。「勇敢な少女。だが、知識には代償が伴う。真実を知る準備はできているか?」
エリカはうなずいた。「私は何でも受け入れる覚悟があります。」
魔女の声はどこまでも響き渡り、周囲の空間が歪んだ。「では、時を遡りなさい。だが、戻った後の選択は君に任せる。」
まばゆい光がエリカを包み込み、彼女は時空を超えた。周囲の景色が流れ去る中、彼女は自らの過去に戻り、両親の元へ辿り着いた。そこに立っているのは、彼女の笑顔で輝く母と父だった。涙が止まらない。しかし、その瞬間、彼女は思い出した。彼らを救うためには、運命に逆らってはいけない。
エリカは一歩踏み出し、「私は未来がいる。悲しみも痛みも、私の選択によって変えられる」と心に誓った。その言葉に一瞬、両親の視線が彼女に向けられた。「あなたの選択が、運命を導くのだ。」
再び光が彼女を包む。目が覚めたとき、エリカは自らが望んだ「知識」を得ていた。星の石の力は過去を変えるものではなく、自身が抱える痛みを理解するものだということを。
彼女は、自分の村に戻り、新たな一歩を踏み出すことに決めた。彼女の胸には内なる力が満ち、故郷の人々に、過去の悲しみに翻弄されない未来を築くために尽力する覚悟が固まっていた。エリカは、魔法を使う者としての道を選び、周囲の世界を変えるために歩き出したのだ。