ポジティブな魔法
ある暖かな春の日、私は大学入学と共に東京に上京してきた。一人暮らしをすることになった小さなアパートのドアを開けると、少し古びた匂いが鼻を刺激した。しかし、その匂いを嗅いだ瞬間、なぜか胸の中に「ああ、ここから新しい人生が始まるんだ」という不思議な感覚が湧いてきた。
上京して初めての一週間は、まるで目まぐるしい色と光の乱舞のようだった。大学の新入生オリエンテーション、講義、そして新しい友人たちとの出会いがすべて、新鮮でエキサイティングだった。そんな中で、特に私を魅了したのは同じ学科の佐藤さんという女性だった。佐藤さんは笑顔が絶えず、彼女と話していると自分も自然と笑顔になってしまう、不思議な力を持っていた。
ある日のこと、講義が終わった後、彼女が私に「一緒にお茶でもしない?」と声をかけてくれた。カフェで向かい合って座りながら、私たちはお互いのことを話し始めた。家族や友人の話、将来の夢、そして何気ない日常の話題が次々と口をついて出た。彼女は私に、「どんなことがあっても、ポジティブを忘れなければ、きっと大丈夫」と微笑みながら言った。その言葉が、私の中に静かに刻まれていった。
時は流れ、大学生活も順調に進んでいたが、ある日突然、私は季節外れのインフルエンザにかかった。高熱と体の痛みに苦しみながら、病院の待合室でぼんやりとした意識の中、ふと佐藤さんの言葉が頭に浮かんだ。「ポジティブなら、きっと大丈夫」その言葉に励まされ、何とか一週間の療養を乗り切った。
インフルエンザから回復した後、私はある挑戦を決意した。大学のボランティアサークルに参加し、多くの人たちと協力して社会貢献活動をすることにしたのだ。その活動の中で、孤児院の子供たちと触れ合う機会があり、彼らの笑顔に触れるたび、自分の心が満たされていくのを感じた。その瞬間、佐藤さんの言葉が再び頭に浮かんだ。「どんなことがあっても、ポジティブを忘れなければ、きっと大丈夫」
ボランティア活動を続ける中、他のメンバーとも深い絆が生まれ、私の大学生活はより充実したものになっていった。さらには、佐藤さんとの友情もますます深まり、彼女と一緒に過ごす時間は私にとって宝物のような存在となった。
大学四年生の春、私はとうとう卒業論文の提出を迎えた。研究テーマは「ポジティブ心理学の視点から見る社会的相互作用の重要性」というもので、自分の経験や出会いをベースにした内容だった。論文を書き上げた後、教授から「素晴らしい内容だね」と褒め言葉をもらい、自分の努力が報われた瞬間を感じた。
卒業式の日、佐藤さんが私の手を握り「おめでとう」と笑顔で言ってくれた。その瞬間、私はこの四年間のすべてがポジティブであり、そしてそれがこれからの人生を照らす大きな道標になると確信した。
就職してからも私は彼女の言葉、そして大学での経験を胸に、ポジティブな心を持ち続けることを心がけている。一日の終わりには、いつも感謝の気持ちを抱きながら、一つ一つの出来事に対して前向きな視点を持つことを忘れないようにしている。
ある日、私は幼い頃からの夢であった作家としての道を歩み始める決意を固めた。初めての著作はもちろん、自分の大学生活をベースにした自伝的な作品だった。執筆中も「ポジティブを忘れなければ、きっと大丈夫」という佐藤さんの言葉に支えられ、親指が疲れてもキーを叩く手は止まらなかった。
その本が世に出た時、多くの人から「勇気づけられた」「心が温かくなった」との感想が届いた。その瞬間、私は世界中のどこかで、誰かがポジティブな心を持ち続けることに少しでも貢献できたと感じ、胸がいっぱいになった。
今でも時折、佐藤さんと会ってお茶をするが、彼女の笑顔は変わらず、そして彼女の言葉も私の心に深く息づいている。どんな困難が待ち受けていようとも、ポジティブでいれば乗り越えられる。その教えを胸に、私はこれからも前を向いて進んでいく。