ケーキと恋の味Wa果
小さな町に住む姉妹、アキとミナ。アキはやり手のキャリアウーマンで、ミナはフリーランスのイラストレーターだ。二人は外見こそ似ているものの、性格は対照的だった。しかし、一つだけ共通点があった。それは――恋愛運が絶望的に悪いことだ。
ある晴れた週末の朝、二人は揃って商店街を歩いていた。アキはスマホを見ながら仕事のメールに回答しており、ミナは近くのカフェで次回のイラストを描く素材を探していた。
「アキ、おいしいケーキがあるらしいよ!」ミナが興奮気味に言った。
「ミナ、甘い物はちょっと控えた方がいいんじゃない?」アキは眉をひそめた。
その時、急に前方から自転車のベルが鳴り響いた。二人が避けきれず、ミナのスケッチブックが地面に落ちた。
「あっ、ごめんなさい!」青年が急いで止まり、スケッチブックを拾い上げた。彼の名はケンジ。地元で人気のケーキ屋を経営している。
「いえ、大丈夫です。ケンジさんのお店、いつも美味しいケーキを楽しみにしています!」ミナはにっこり笑った。
「ありがとう。でも、もっと注意するようにするね。」ケンジは恐縮して言った。
アキはしばらくそのやり取りを見ていたが、急に思いついて言った。「ケンジさん、もしよろしければ私たちに新しいケーキの味を選ぶ手伝いをさせてくださいませんか?」
ケンジは驚いた表情を浮かべたが、「もちろん、ぜひお願いします!」と答えた。
数日後、姉妹はケーキ屋「ケンジとスイーツ」に集まった。店内は季節の花で飾られ、甘い香りが漂っていた。ケンジは、数種類の新作ケーキを用意して待っていた。
「さあ、お二人に試食してもらいたいのはこれです。」ケンジが訥々と説明している間、アキは鋭い視線で彼を見つめていた。
「これ、ちょっと甘さが足りないかもしれないですね。」アキは一つのケーキを口に運びながら言った。
「うん、甘さ控えめが好きな人にはいいかもね。」ミナは賛同した。
試食会は大成功。ケンジは大満足だったが、アキは別の目的もあった。「ところで、ケンジさん。個人的に興味があるんですけど、彼女さんはいらっしゃいますか?」
ケンジは狼狽しながらも、「いや、今はいないんですけど…」と答えた。
その晩、姉妹は台所で夕食を作りながら会話を続けた。「あのケンジさん、結構いい人だよね?」ミナが話し出した。
「そうね。でも、ああいうタイプって結構騙されやすいんだよ。」アキが冷静に言った。
数週間後、再びケンジのケーキ屋に招かれた姉妹は、新作ケーキの試食を依頼されることに。しかし、今回は少し違った状況が待っていた。ケンジの店に訪れると、一人の女性が立っていた。
「こんにちは、ケンジさんの彼女のアヤです。」彼女が笑顔で挨拶した。
アキは心中で舌打ちしながら、ミナは満面の笑みを返した。「アヤさん、はじめまして!私たちはケーキの試食仲間です!」
アヤはケンジに目配せし、「ぜひ一緒にケーキの試食を楽しみましょう!」と提案した。
試食会は再び始まり、アキは元気なくケーキを食べていたが、一方のミナは楽しそうにアヤと話していた。その様子を見ていたケンジは、そっとアキに近づいて言った。「アキさん、実は…アヤは僕の妹なんだよ。」
アキは驚いた。「え?どうして嘘をつかせたの?」
「アキさんが僕に興味を持ってくれてるかどうか知りたかったんだ。ごめんね。」ケンジが謝ると、アキは微笑んで言った。「なら良いわ。これからも試食会、続けましょうか。」
その瞬間、ミナが笑い声を上げた。「姉さん、ケンジさんとアヤさん、二人とも素敵な人だよね。みんなで一緒にケーキを作るのが楽しみ!」
姉妹とケンジ、そしてアヤはその日から仲良くなり、新しい友情と恋が芽生え始めた。
やがて、アキとケンジは本格的に付き合い始め、ミナはアヤとケーキ作りのイベントを企画することになった。姉妹の絆も一層深まり、彼らの小さな幸せな日常はますます豊かになっていった。
こうして、姉妹の恋のネジは少しずつ巻かれ、彼らの日常は笑顔とケーキと共に続いていくのだった。