桜色の恋

桜が満開の春の午後、深い青空の下で私は空を眺めていた。モダンなカフェで働く私、佐々木美咲(ささき みさき)は、忙しい日々から一瞬だけ解放されるこの時間が好きだった。カフェのテラス席からは川沿いの桜並木が一望でき、お客様たちもその光景に満足しているようだった。


「美咲、ちょっと手伝ってくれない?」シフトリーダーの声が聞こえ、私は店内に戻った。そこで出会ったのが、やはりカフェで働く妹の桜(さくら)だった。桜は私よりも二歳年下で、まだ大学に通っているが、学費を稼ぐためにアルバイトをしている。私たちはカフェで一緒に働く機会が多く、お互いの存在が支えになっていた。


「美咲姉ちゃん、お客様が多いね。すぐにドリンクを運ばなきゃ。」桜は忙しそうに動き回りながらも、笑顔を見せる。しかし、私にはわかる。彼女が無理をしていることが。


夕方になり、カフェが少しずつ落ち着いてくる時間帯、私たちは同じテーブルで片付けをしていた。その時、不意に桜が言った。「姉ちゃん、好きな人いる?」


私は驚いて問返した。「急にどうしたの?急にそんな話?」


桜の顔が少し赤くなり、困ったように微笑んだ。「今日ね、大学の友達から相談を受けて、ふとも姉ちゃんのことを思い出したから。」


私は少し黙って考え、そして答えた。「好きな人か…まあいると言えばいるけど、これといって進展はないかな。」


桜は私の答えに満足したのか、うなずいて次の質問を用意していた。「その人、どんな人?」


私は内心少し困ったが、嘘をつくのも嫌だったので正直に答えた。「カフェのお客様の一人で、よく来る常連さん。彼の名前は…高橋さん。穏やかで優しくて、話すと落ち着く感じの人。」


桜は笑顔を見せ、「そうなんだね。それで、その人とはどうなったの?」


「まだ何も始まってないよ。お客様とスタッフだし、なんとなく近づきにくいんだ。でも、彼のことを思うだけで、なんだか胸が温かくなる。桜、あなたは恋をしているの?」


妹はその質問に少し驚いた表情を見せたが、すぐにうなずいた。「うん、実はね…私も気になる人がいるの。でも、まだ友達としか見られていないように感じる。」


私は優しく笑いながら妹の顔を見つめた。「桜、大切な人を見つけたんだね。どんな風に想っているの?」


桜の顔が少し赤くなり、視線を下げた。「その人は、大学の同じサークル仲間で、明るくて面白くて…なんだか姉ちゃんと似ている部分もあるかも。それで、彼と話すたびに、もっと仲良くなりたいって思うんだ。」


その話を聞いて、私たちは互いに笑い合った。姉妹なのに、同じような悩みを抱えていることが面白かったのだ。少し時間が過ぎ、カフェが閉店に近づくと、お客さんも減り、私たちは片付けをしながら、一緒に自宅に戻る準備をした。


夜の桜並木を歩きながら、私は桜に声をかけた。「桜、あなたの恋も私の恋も、まだ始まりの段階だね。でも、一歩踏み出すことが大事だよ。勇気を出してみない?」


桜は少し考え込んだように見えたが、やがてうなずいた。「そうだね、姉ちゃん。私も彼に気持ちを伝えてみるよ。姉ちゃんも高橋さんに話しかけてみたら?」


私はその提案に嬉しくなり、「そうだね、お互いに頑張ろう」と返した。


日々が経ち、私は高橋さんとの距離を少しずつ縮めることができた。カフェで彼と話す機会が増え、共通の趣味や興味について語り合ううちに、お互いに自然と笑顔が増えていった。そして、一ヶ月後、私はついに勇気を出して彼に気持ちを伝えることができたのだ。


一方、桜もサークルの男の子に気持ちを告白し、見事に彼と付き合うことになった。私たちはこの喜びを分かち合い、お互いの恋を応援し合うことができた。


姉妹として、一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に成長してきた私たち。恋愛という新たなステージでも、お互いの存在が大きな支えとなった。そして、桜並木が再び満開を迎える頃、私たちの恋もまた、美しく咲き誇っていた。


桜の花びらが風に舞い、私たちはその美しい景色の中で、新たな一歩を踏み出すことができた。お互いを想い合い、支え合う姉妹の絆は、何よりも強く、そして温かなものだった。