兄弟の音楽

私には兄がいる。彼の名前は大輔、私より5歳年上だ。物語は、私が小学校に入る前のことから始まる。兄は明るく活発で、周りの友達からも人気者だった。私もいつも兄について回り、彼の後を追いかけていた。


ある晴れた日の午後、兄は友達と遊ぶ約束をしていたが、私も一緒に混ぜてもらいたくて一緒に遊んでいた。すると、兄は私を困惑させるような顔で見つめて言った。「今日は友達と遊ぶから、ダメだよ。」私の目は潤み、兄はそれに気づくと、少し困って目をそらした。結局、兄は私を連れて行くことにした。


公園には、沢山の友達がいて、皆楽しそうに遊んでいた。兄は私をかばいながら、友達と一緒に遊ぶ。芝生でサッカーをしたり、かくれんぼをしたり。私は兄と友達の間にいるだけで幸せだった。しかし、兄は時折、私を仲間外れにするような視線を向けてくる。その瞬間、私は自分が兄にとっての負担であることを理解した。


それから数年が経ち、私は小学校に入学した。兄は中学生になり、彼の世界はどんどん広がっていった。友達も増え、音楽部に入ったり、勉強を頑張ったりしていた。私も兄のようになりたいと思い、勉強やスポーツに励んだが、いつまで経っても兄の足元にも及ばなかった。それでも、兄の帰りを待ちながら、彼の成功を自慢に思った。


ある日、私は兄が新しい友達の間で浮かれていることを知り、少し嫉妬の気持ちが芽生えた。教室で友達が兄のことを「あいつ、すげーイケてるよな」と話しているのを聞いて、私は心が少し重くなった。兄は私の尊敬の対象でありながら、同時に遠い存在になっていた。


数ヶ月後、兄は突然、家にあまり帰らなくなった。自分の部屋に閉じこもり、何かに没頭しているようだった。時々、彼がファッションや友達の話をしているのを聞いて、私は心に影を抱えた。大輔が私から離れていく感覚が、じわじわと私を取り巻いていた。


そして、そんなある晩、私は寝室で何かの音を聞いた。兄の部屋から微かに流れる音楽に気付き、そっと扉を開けた。兄は一人で音楽を作っていた。初めて目にする彼の姿に、私は驚きとともに彼の新たな一面を知ることができた。


その日から私は、自分も何かを始めたいという思いが強くなり、兄の影響を受けるようになった。私も楽器を始め、兄と共演を夢見るようになった。兄も私に気をかけるようになり、少しずつ私たちの間にまた絆ができつつあることを感じた。


時間が経つにつれて、兄が高校を卒業し、地元の音楽専門学校に進学することが決まった。彼は夢を追い求めるために家を出ることになった。私の心は寂しさでいっぱいだったが、兄が心からやりたいことを見つけたことを誇りに思った。


兄がいなくなった後、私は自分自身を見つめ直すことになった。何をしたいのか、何に夢中になれるのか。いろんなことを考えながら、時が流れていった。その間に私は学校での友達作りに力を入れ、サッカーを始めたりもした。自分なりに成長していることを感じ、少しずつ自信がついていった。


数年後、兄はプロのミュージシャンとしてデビューを果たした。彼の音楽は多くの人々に愛され、私もその姿を誇りに思った。そして、ある日、兄がライブを行うことになり、私は夢にまで見た彼のステージを見ることができた。兄の姿を見ていると、彼との思い出が次々に蘇り、涙がこぼれそうになった。彼の音楽は、私にとっての兄の存在そのものであり、私もまた強くなりたいと思った。


ライブが終わり、舞台裏で兄と再会した。彼は優しい笑顔で私を迎え、私たちは抱きしめ合った。その瞬間、お互いに抱えていた思いや願いが一気に解放されていくようだった。私たちの間には、年齢や距離を超えた絆がしっかりと存在していた。


こうして、兄弟の絆は新たな段階へと進んでいった。兄は夢を追い、私は自分の道を見つける。これからも、互いに支え合いながら成長していくことができると信じている。兄と私は、どんなに距離があっても、一緒に歩んでいく存在であることを忘れたくなかった。