友から恋へ
「友達以上恋人未満」
信介は大学入学以来の親友、由紀と共に過ごしてきた。正義感が強く、いつも明るくて、友達のためには何でもしてくれる由紀。彼女の笑顔は、信介にとって特別なものであった。でも、恋愛感情を抱くことはなかった。彼はあくまで友人として、彼女を大切に思っていた。
大学三年の春、信介はあることで悩んでいた。彼女が就職活動を始めると共に、将来について考えるようになったのだ。今の関係が続くのか、友人から一歩進むべきなのか。しかし、そんな気持ちを素直に伝えることができず、日々を無難に過ごしていた。
一方、由紀もまた、信介に特別な感情を抱いていた。彼女は自分の気持ちを理解してもらえるのか不安だったが、信介といる時間が何よりも幸せだった。友人の枠を越えたこの感情をどうすればいいのか、ずっと悩んでいた。
ある日、友人たちとの飲み会が開かれた。その夜、ほろ酔いになった由紀は、思わず信介に言ってしまった。「信介、ずっと一緒にいたいと思ってるんだ。」
彼女の言葉に、信介は動揺した。「俺も、ずっと一緒にいたいけど、友達としてだろ?」
由紀の表情が一瞬固まった。彼女はかすかな希望を抱いていたのに、信介の言葉はその逆を意味したのだ。心の中でモヤモヤしていた気持ちが、ますます膨らんでいく。由紀はその夜、酔った勢いで言った言葉を後悔し、二人の関係が壊れるのを恐れた。
数日後、気まずい雰囲気の中、二人は大学で顔を合わせた。由紀は何事もなかったかのように振る舞おうと努めたが、心の中には不安が渦巻いていた。信介も同様で、由紀のことが気になって仕方がない。しかし、口を開けばまた余計なことを言ってしまいそうで、怖かった。
時が経つにつれて、由紀の気持ちはどんどん大きくなっていった。「このままじゃダメだ、伝えなきゃ」と思うようになった。しかし、信介は「友達でいる方が幸せだ」と自分に言い聞かせ続けていた。そんなこんなで数ヶ月が流れ、二人はお互いの心の距離を意識しながらも、関係はそのまま続いていった。
ある日、由紀は山にハイキングに行く計画を立てた。友人たちを誘ってもいいが、信介と二人きりで行きたいと思っていた。彼女は思い切って信介を誘うことにした。「今度の週末、ハイキングに行かない?」と。
信介はその提案を受け入れ、二人は休日の朝、澄んだ空気と爽やかな風の中、山に向かって出発した。途中、雑談をしながら彼らは高みを目指した。少し汗をかいて、山の頂上に立つと、広がる景色に感動し合った。
由紀はその瞬間を利用して思わず言った。「ねぇ、信介。私、実は信介のことが好きなんだ。」
その瞬間、信介の胸の鼓動が高鳴った。「俺も、好きだよ。でも、友達としての好きだけじゃなくて、もっと特別な意味で。」彼もまた、心の中に秘めていた気持ちをぶつけた。
二人はしばらく黙った後、お互いの目を見つめた。由紀の目には涙が滲んでいたが、それは喜びの涙だった。信介も驚きと幸福感に包まれ、彼女の手をそっと取り、優しく言った。「これから、友達以上恋人未満という関係から、恋人としてやっていこうか。」
その場に流れる静けさの中、二人の心は素晴らしい共鳴を起こしていた。信介は由紀の手を握り、彼女の笑顔を見つめた。これからの未来がどうなっていくのかは分からない。しかし、二人はお互いの気持ちを理解し、未来に向けて新たな一歩を踏み出す覚悟を決めた。
恋愛というジャンルで、友情が愛に変わる瞬間。信介と由紀の心が交差したその時、二人は真の幸せを見つけたのだった。