愛情の花束
春の柔らかな日差しが教室の窓から差し込み、校庭の桜が満開を迎えていた。私、佐藤由香里は、今年で高校三年生になる。卒業まであと一年。その先に待っているのは新しい世界だが、この学園での最後の一年間、私はある決意を胸に秘めていた。
*** 放課後 ***
部活のラスト練習が終わり、教室に戻った時だった。クラスメートの木村翔太が、窓際に立ちながら一枚の絵を描いていた。翔太とは中学時代からの付き合いで、絵が得意な彼とはよく美術部の展示会で一緒になることが多かった。しかし、私は今までに一度も彼に自分の気持ちを伝えたことがなかった。
「やっほー、また絵を描いてるの?」私は自然に声をかけた。
「うん、桜が綺麗だからね。君も描かない?」翔太はやさしい笑顔で答えた。
その瞬間、春風が風のように私の胸を撫でた。毎日のように過ごすこの教室で、翔太が私の心の中にいつしか深く根を下ろしていることに気づいたのはつい最近のことだった。
「今日は見てるだけにするよ。でも、君の絵が完成したら見せてね。」そう言って、私は翔太の描く絵に見惚れた。
*** 数週間後 ***
連休明けの月曜日、学園祭の準備が本格的に始まった。今年の美術部のテーマは「愛情」。私は翔太と共に、クラスのみんなが活気づく中、壁画プロジェクトに挑んでいた。主題は「愛情の花束」。春から始まり、夏、秋、そして冬へ、一年を通じた愛情を表現する大作だ。
「ここの色合い、もう少し明るくしたほうが良いかも。」と翔太がアドバイスをくれる。
その真剣な眼差しに、私は何度も心を動かされた。「ありがとう、翔太。本当に助かるよ。」
「由香里こそ、忍耐強くてすごいよね。」翔太は照れ笑いを浮かべた。
準備で忙しいながらも、二人で共に過ごす時間はあっという間だった。自然と互いのことをもっと知りたいと思うようになっていた。学園祭当日が近づくにつれ、私の翔太への想いは強くなっていった。
*** 学園祭当日 ***
校庭は色とりどりのブースや展示で、賑わっていた。美術部の展示も総仕上げを迎え、多くの来場者が足を止めて見入っていた。翔太と私は、作品の完成を見届けながら、並んで立っていた。
「由香里、あのね。」翔太が突然真剣な表情で話しかけてきた。
「何?」心臓が高鳴る。
「実は、君に伝えたいことがあるんだ。」翔太は少し躊躇しながらも続けた。「由香里がずっと大切にしてくれてたこと、僕も同じ気持ちでいるんだ。」
その言葉が胸に響いた。私も何度も伝えたかったけれど、躊躇していた想いが一気に溢れ出した。
「私も、翔太。ずっと君のことを・・・。」
言い終わらないうちに、翔太が私の手を握った。その瞬間、私たちは互いの気持ちを確かめ合うことができた。周りの喧騒が遠ざかり、静かな時間が流れていた。
*** 高校生活の締めくくり ***
季節が冬に移り変わり、受験も近づいてきた。私たちは学業に集中しながらも、変わらずに絵を描き続けていた。翔太との愛情は、絵を通じてますます深まっていった。
受験が終わり、卒業式の日がやってきた。教室の黒板には、クラスメートからのメッセージがぎっしりと書かれていた。
卒業式後、私は翔太と共に学園の校庭を歩いた。「これからも、ずっと一緒にいようね。」と、二人で約束を交わした。
翔太との愛情は、学園での思い出と共に永遠に続くものだと信じている。学園での最後の一年は、私にとって一生忘れられないものとなった。
それは、ただの恋愛の始まりではなく、人とのつながり、絆、そして愛情を学ぶ大切な時間だった。この先も、翔太と共に愛情の花束を描き続けること、それが私たちの未来だと思っている。
由香里と翔太の絆は、この美しい学園で育まれてきた。春の日差しの中、二人は新たな未来に向かって歩き出した。私たちの物語は、まだ始まったばかりだ。