青い花と青春

春の陽射しが差し込む午後、桜の開花が待ち遠しい高校の校舎の裏に、あまり目立たない花壇があった。その中には、小さな君が好きな青い花が、ひっそりと咲いていた。私はその花が好きだったが、何よりも、その花壇を見守る彼女が好きだった。


あかりは、明るくて、誰にでも優しい女子で、校内では天使のように愛されていた。授業中、つらい問題に直面している私を見つけては、自分のノートを貸してくれたり、昼休みにはいつも笑顔で話しかけてくれたりした。それが、私にとってはどれほど大きな支えだったか。


ある日、あかりが私に「一緒に花壇の手入れをしない?」と提案した。彼女の誘いに少し驚きながらも、気がつけば頷いていた。花壇の手入れをしながら、私たちは色々な話をするようになった。自分の夢や、将来のこと、そして、彼女の好きなこと。彼女は花が好きで、特に青い花に魅了されていると言った。その言葉を聞くたびに、私はあかりの笑顔を思い出していた。


数週間後、学校の文化祭が近づいてきた。あかりはクラスの出し物として、花をテーマにしたブースを提案した。私もそのアイデアに乗り、手伝うことになった。文化祭の準備を進める中で、あかりとの距離はどんどん縮まっていった。一緒に花をアレンジし、飾りつけをしながら、お互いの夢や趣味について語り合った。


そんなある夜、学校の帰り道にふと、彼女が気に入っている青い花を手に入れることができた。自宅の小さな庭に植えて、育てることを誓った。あかりにそのことを話そうと思ったとき、別の友人からの連絡が入った。友人は、あかりの中学時代の恋人に関する噂を私に告げた。「あかり、あの人とまたつながりがあるんじゃない?」


その言葉は、私の心に冷たい水を注いだ。不安が一気に膨らんだ。あかりの笑顔の裏には、私の知らない過去があるのだろうか。私は、不安と嫉妬の間で揺れ動きながらも、彼女との時間を大切にしようと努力した。文化祭当日、私たちのブースは多くの人で賑わい、あかりの笑顔が輝いていた。でも、私はその笑顔がどこか遠くにあるように感じた。


文化祭が終わった翌日、私は一人悩んでいた。あかりに想いを伝えようか、それとも彼女の過去を知ったことで距離を置くべきか。そんな中、彼女から「放課後、ちょっと話したいことがある」とメッセージが届いた。胸が高鳴ると同時に、恐怖も感じた。


放課後、いつも通りの花壇に彼女が立っていた。私はその前に立ち、ドキドキしながら彼女を見つめた。あかりは、しばらく沈黙した後、少し前かがみになりながら言った。「私、あの頃のことを思い出していた。中学の時に初めて好きになった人、彼とは今でも友達。でも、もう過去のこと。私が今大切にしたいのは、あなたとの時間。」


その言葉を聞いた瞬間、私の心が少し軽くなった。彼女が私を見つめる目に、自分が大切にされていると感じた。「あかり、私も…」言葉が続かなかった。でも、その時、彼女が私の手をつないで、優しく微笑んでくれた。


その瞬間が、私の青春の一部になった。立ち止まって見ることができる桜の花の美しさが、あかりとの日々を彩っている気がした。心の中の花壇は、青い花だけでなく、彼女との思い出で満ちていくんだと、感じることができた。もう、私たちの物語は始まっていた。