再会の喜び、新たな絆
晴れた夏の午後、カフェ「サンフラワー」の窓際席に座る兄弟は実に対象的だった。兄の隆二は短髪でダンディーなスーツ姿。対照的に弟の優斗はふわりとしたボサボサの髪とTシャツにジーンズというラフなスタイルだ。二人は小さなテーブルに向かい合って座り、目の前にはカプチーノとアイスティーが静かに冷めていた。
「それで優斗、言いたいことがあるって?」
隆二がやや困惑しながらも、いつもの楽観的な笑顔を浮かべて弟を見つめた。優斗は几帳面に並べられた砂糖の小袋を指でいじりながら、ため息をついた。
「兄さん、僕は結婚することにしたよ。」
隆二の目は驚きと喜びで一瞬大きくなった。けれど次の瞬間、彼は一層の疑念と共に眉をひそめた。「え?それはめでたいけど、相手は誰なの?」
「実は…彼女、兄さんの元カノなんだ。」
その瞬間、隆二のカプチーノのカップから泡が飛び散る音がした。彼は手を震わせ、カップを持ち直す。「優斗、それは…どういうこと?」
「落ち着いて、兄さん。」優斗は手を広げて困惑する兄をなだめるように言った。「豊華さんとは偶然再会して、話しているうちに意気投合したんだ。」
隆二は少しの間口を開けたまま、言葉に詰まり、次に笑い出した。「いや、ちょっと待て。彼女とは学生の頃付き合ってただけだし、もう何年も連絡を取っていない。それに、お前が幸せになるなら、それ以上ないことだ。でも…俺の元カノってのがちょっと引っ掛かるな。」
優斗は兄のリアクションを見て、少しほっとした様子だった。「そうだね、ちょっと複雑だよね。だからこそ、まず兄さんに話しておこうって思ったんだ。」
その後の沈黙の中で、二人はカフェのガラス窓越しに通り過ぎていく人々や車の流れを見つめた。ちょうどその時、ドアが開き、店内に笑顔が輝く豊華が入ってきた。彼女は髪を肩まで下ろし、シンプルなワンピース姿。そして、その美しい笑顔はかつて隆二が知っていたものと同じだった。
「豊華!」優斗が叫んで立ち上がり、彼女の手を取った。隆二も立ち上がって、ぎこちなく笑いながら彼女に手を挙げた。「久しぶり、豊華。」
「久しぶりね、隆二君。」彼女は微笑んで、でも少し戸惑いを見せながら答えた。「まさかこんな形で再会するとは思わなかったわ。」
「本当にね。」隆二は肩をすくめた。「でも、優斗から話を聞いて…二人ともすごくお似合いだと思う。」
その言葉に優斗と豊華は顔を見合わせ、お互いの手をきゅっと握りしめた。
カフェの次のテーブルで、小さな女の子がアイスクリームを兄にねだっていた。兄は弟妹に比べると少し大きく、アイスクリームのスプーンを持って不器用に笑っていた。その姿を見た隆二は、ふと自分たちの幼少期を思い出した。
「そういえば、俺たちもあんな感じだったな。優斗、お前よく俺にアイスクリームをせがんでた。」
優斗は爆笑した。「そうだね、そしていつもお兄ちゃんのスプーンを奪ってた。」
「そうだったな。」豊華も楽しげに加わる。「その頃から兄弟仲良しだったなんて素敵ね。」
「ええ、まあそれなりにね。」隆二は軽く笑いながら答え、二人の幸せを心から祝福している自分に気付いた。複雑な感情は次第に解けていった。
「それじゃあ、二人の新しい人生を祝して乾杯しようか。俺のカプチーノは冷めちゃったけど、心は温かいよ。」
そう言って隆二はカップを持ち上げ、優斗と豊華もそれに続いてグラスを持ち上げた。3つのグラスが軽く触れ合い、キラリと光を反射した。
その後、3人はカフェを出て、青空の下をゆっくりと歩き始めた。豊華が楽しそうに話す中、隆二は兄としての役割を再確認し、優斗の笑顔を見つめた。これからも続く兄弟の絆と、そこに加わる新しい家族の関係を感じながら、彼らは未来へと一歩一歩踏み出していった。